私は子供の頃より手を動かす事が大好きで、糸や布に非常に興味を持ち、 手芸や縫物を楽しむ子供でした。
札幌の街中に住んでいた私は小学生の頃、遠くまで遊びに行き、身近な草や花々を摘んで遊びました。
数十年もたった後に自然素材を使って作品を作る事になるとは、その当時は思いもしませんでした。
高校を卒業と同時に昼は働き、夜は洋裁学校で洋裁を習い、布への興味は尽きませんでした。
30歳の頃から糸車で糸を紡ぎ、編み物を習い、少しずつ紡げる糸の種類、編み物技法を増やしていき、実用的な衣類を編みました。
徐々にフェルト、織など多種の技法を習得し、制作の幅が広がりました。
私は、自分の頭の中に浮かんだ形を作り、面白いと思った事を作品として表現しています。
作品に対するテーマは「素材を生かした心地の良い物を追求する」事です。
私の頭や体のどこかにある、感覚を探して製作しています。
今までも、「透明な織物を織りたく、素材をテグスにして織る」、「繊維の形状記憶性に興味を持ち作品にした」、「ミシンワークで布地を埋める作品」等々、表現しています。
私が面白いと思う技法を使って製作した作品を見た人達も、その人にしかないストーリーを思い浮かべてくれると思います。
その為にもシンプルな形状であまり沢山の思いを込めないという事を意識しています。
2000年12月から20年かけて年齢、男女を問わず、色んな職種の方の、92人の「とても大事な足」を編みました。
足はとても重要です。人は自分の足で立ち、自分の足で目的の所へ歩いて行きます。
自分の未来へ向かって歩いて行きます。
「記憶する足形」を製作する時は苧麻の繊維を細く裂き、糸状にします。
足の裏部分から、モデルの足に合わせて編み始め、2時間40分ほどかかります。
その間、色々な会話をする方もいますし、必要最低限の話だけをする方もいます。
私の作品の中には、その時のモデルとの会話も入っています。
しかし、作品を見る方にはどのような会話が交わされたかはわかりませんし、どのような思いで私の作品を見てくれるのかも、私にはわかりません。
私は繊維が大好きです。その繊維を使い、色んな所を踏みしめてきたモデルの足を編んでいく作業を、これからも続けていきます。